研究概要 |
本研究では,以下の3つの現象の解析に取り組んだ. 1.変成鉱物の組成ゾーニング 2.広域変成作用におけるnormal grain grothによる黄鉄鉱の粒径変化 3.接触変成作用におけるnormal grain grothによる石英の粒径変化 このうち1については,接触変成岩中の鉱物の仮想的な部分平衡における数値解析結果から,適当なT-t経路に対して,鉱物の核に記録される変成温度が最高となる粒径(最適粒径:Most Suitable Size,以下MSSと呼ぶ)を特定できることが判明した.このことは逆に,同一変成岩中の様々な粒径の鉱物の中で核に最高の変成温度を示す粒径(MSS)を測定することにより,変成時間が決定されることを意味する.粒径がMSS及びこれより小さい(または変成時間がこれより長い)場合には,retrogradeなパターン(reverse zoning)が記録され,粒径がある程度大きい(または変成時間が短い)場合には,中心部にprogradeなパターン(normal zoning)が保存される.本研究では,このMSSと変成時間の一般的な関係式が抽出された.また,このMSSによる変成時間の見積は,鉱物の温度-組成関数の型に対する依存度が極めて小さいことが示された.2の現象については,三婆川帯のキ-スラーガー産黄鉄鉱の検討が行なわれ,変成度に応じて黄鉄鉱の粒径(CSDパターン)が変化することが確認された.また,3つの現象については,花崗岩の貫入に伴う接触変成作用によりチャート中の石英が粗粒化することが確認されたが,この現象は,接触部の極く近傍に限られることが判明した.
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