研究概要 |
超高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)を用いた研究では主として1995年に市販された新しい2次元記録媒体であるイメージングプレートを用いて基礎的な検討を行いその特性を明らかにした.また,鉱物試料としてはアンチゴライト,2,3の雲母粘土鉱物,混合層鉱物,長石,アパタイトなどの高分解能観察を行ない,それらの微細構造,微細組織を明らかにした.また,今回検討した試料のように電子線損傷が激しい鉱物では撮影条件(焦点はずれ量)を変化させた一連の像を得ることが通常の写真フイルムでは非常に困難な場合があった.これでは原子位置を一義的に決定し得ない場合を生じることになるが,イメージングプレートを使用した結果,低い電子線量でアンチゴライトの焦点はずれ量を変化させた一連の像を得ることができた.今後,さらに,高分解能像をイメージングプレートで撮影してできる限り正確に定量的に読み取り,原子スケールの評価を行うための観察条件などの基礎研究を続け,新しい鉱物の組織観察法として確立したい. 原子間力顕微鏡(AFM)を使用した研究では主として天然の雲母粘土鉱物,カオリン鉱物,CVD法で合成した炭素物質の検討を行った.原子間力顕微鏡の基礎的な検討としてコンタクトモードとタッピングモードの比較,また,AFM像とSEM像,TEM像の比較も行いミクロンオーダーの凹凸が観察試料に存在するときのAFM像に生じるア-ティファクトを明らかにした.雲母粘土鉱物やカオリン鉱物のAFM観察において微細な粉末の固定法を新たに開発した.そして,雲母粘土鉱物,カオリン鉱物の結晶表面の微細構造を観察し,その結晶表面に成長ステップを見出すことができた.
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