研究概要 |
高分解能光電子分光法に相当するパルス電場イオン化分光法をo,m-トルイジン、o-クレゾール、o,m-キシレンに適用した。観測したすべてのスペクトルは非調和な間隔の低振動数のバンドを示し、これをカチオンに於けるメチル基内部回転準位と帰属した。トルイジン及びキシレン分子は1次元内部回転子近似に基づき解析し、カチオンに於ける内部回転ポテンシャルを決定した。中性分子におけるポテンシャルと比較したところ、イオン化により内部回転障壁が大きく変化していることが明らかになった。特にm-トルイジンはイオン化後内部回転障壁が20倍も増大し、メチル基が回転しにくくなっている。これらの結果をイオン化による分子構造変化及びイオン化による電子分布変化の観点から検討した。その結果、分子構造変化だけではこの変化を説明できず、電子的効果が重要であることを明らかにした。 キシレン分子はメチル基を2個有する分子であり、2個のメチル基の相互作用の観点から解析した。m-キシレンカチオンでは2つのメチル基の相互作用が極めて弱く、2個のメチル基が独立して回転していると結論した。一方、o-キシレンは極めて複雑な準位構造を示し、2個のメチル基が強く相互作用していることが示唆された。中性分子における内部回転準位の帰属を基にPFIスペクトルを検討したところ、相互作用による分裂が中性分子の6倍以上に増大していることがわかった。この分裂は中性分子での帰属の検証を含め検討中である。以上の結果は全て現在投稿準備中である。
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