研究概要 |
本研究課題のもと検討し,結果以下に列挙した成果を得ることができた。 1.新規7員環π電子系化合物の環開裂反応:簡便なトリエン合成法の発見 熱力学的に不安定なall cisのconfigurationを有するトリエン体の合成方法を見い出し,その有用性について,理論と実験の両面から検討した。 2.C【double half arrows】S【double half arrows】S結合を有するπ電子系化 3.硫黄原子を含む母体[7]アヌレンチオン(トロポチオン)の合成,単離及び基本的性質の解明 トロポチオンは不安定C【double half arrows】S結合をもつ母体骨格構造を有するトロポノイド化合物である。この化合物を結晶状況でも不安定な結晶として単離し,物性及び反応性においてトロポンとの顕著な差異を見いだした。この化合物の双極子モーメントの測定ならびに理論的な評価によって今までに標準とされてきたこの化合物の酸素同族体であるトロポンの双極子モーメントの値が間違っていたことを明ら 4.トロポチオンの金属錯体の合成 酸素同族体であるトロポンにくらべて,トロポチオンは室温ではすみやかに二量体や三量体を生成する。この化合物を水銀の錯体として室温で安定に取り扱うことができることを見い出した。そして,その構造を理論的に解明した。 5.ケテンのジエン不認識問題の解決 ケテン-ジエン反応における従来の定説は完全な誤りであることを明かにした。即ち,i)ケテンのC【double half arrows】O結合(C【double half arrows】C結合ではなく)を通しての[4【symmetry】2]型(Diels-Alder)反応と,ii)続いて起こる(3,3)シグマトロピー(クライゼン)転位,の二つの協奏反応の組み合わせ
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