研究概要 |
(1)高圧NMR用石英セルシステムの製作、超伝導分光計を使用した超高磁場高圧NMRの測定実験。 銅ベリリウム製バルブ,SUS-316製セパレーター、合成石英セルよりなる高圧装置をほぼ完成した。まず熱膨張セルの圧力指示薬であるフェニルアセチレンの化学シフトを0, 10, 20, 30, 40, 50℃の各温度において200MPa(約2000atm)まで精密に再測定した。これにより0〜50℃の温度範囲での熱膨張セルによる高圧実験が可能となった。そこでテスト実験としてRibonuclease A(重水溶液)の400MHz高圧NMRを各温度で測定し、天然および変性状態間の平衡定数を各温度、各圧力下で求めた。このデータの解析により、高圧力が蛋白質分子とその周辺の水との疎水相互作用の状態を変化させ、蛋白質の構造安定性を支配していることを明らかにした。 (2)新型大口径熱膨張セルの試作とシクロファン、アセチルアセトンの高圧NMR測定。 ドイツ製の肉厚ガラス管(Duran、内径1.7mm)から、新しいタイプの熱膨張セルを試作した。このセルは当研究室の学生が製作したものであるが、通常150MPa、最高250MPaの耐圧性能をもっている。従来の熱膨張セルの内径は0.8mmであるから約4倍のS/N比の向上が期待でき、製作も容易であることが分かった。 これを用いたシス-1, 12-ジメトキシパラシクロファンの高圧NMR測定で、高圧力下ではメチレン鎖が縮小しているにもかかわらずベンゼン環の回転速度が速くなることを見い出した。また、アセチルアセトンのケト【double half arrows】エノール平衡定数の圧力変化を200MPaまで追跡したところ、依以前ドイツのvon Jouanneらが示した圧力効果のデータ(35MPaまで)とは大きく異なる結果が
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