研究概要 |
π共役系化合物に基づく機能性材料開発の基礎研究として,1,2-シクロペンテニレンエチニレン系および3,4-チエニレンエチニレン系のシス型エンインオリゴマーの合成を行い,物性および反応性を明らかにした。 1.当初の計画どおり,パラジウム触媒によるカップリング反応によって鎖長を延ばし,逐次合成により完全に単分散性で構造に任意性のないオリゴマーの系統的合成に成功した。この反応は,温和な条件で進行し収率も良好であることから,このようなオリゴマー合成に適したものであることを明らかにすることができた。 2.分光学的測定や各種構造解析法によって置換基と構造との相関が得られ,シクロペンテニレン系は鎖長の伸長に伴ってパイ共役系が拡張されていることが分かった。一方,チエニレン系はパイ電子共役系がほとんど拡張されず,鎖長の長さにかかわらず固体状態においても溶液状態においても自発的にら旋構造をとる傾向の強い,きわめて特殊な興味深い系であることが明らかとなった。 3.固体状態の熱反応ではアセチレン結合の関与する反応の生起が見られたが,溶液状態ではかなり安定で,200℃以上でアセチレン結合の関与する反応が生起した。タンデムBergman反応には成功したが,それ以上の多重環化は生起しなっかた。しかし,チエニレン系においては四塩化テルルを用いるイオン反応で環化反応が生起し,ペンタレン骨格を有するチオフェン縮合多環系の合成に成功した. 4.これらのオリゴマーは,可視領域に強い蛍光を有し,共役系に由来するキャリヤ移動能も期待できることから,EL素子等の電場発光材料としての利用が期待できる.しかし,溶解性に乏しく機能性の評価には限界があるが,共同研究によって非線形光学特性の測定を行っている。本研究で得られた知見を元に,さらにπ共役系機能性材料の開発研究を展開していきたい。
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