研究概要 |
トリアルキルアンモニウムメチル基(R=CH_3,C_2H_5,n-C_3H_7,n-C_4H_9)を4,4′位に導入したカチオン性salen型シッフ塩基銅(II),およびニッケル(II)錯体,一般式[M{R_3N^+-CH_2-sal)_2X}]Br_2(X=C_2H_4,C_6H_4,C_<10>H_6など)を合成し,錯体(M=Cu,R=CH_3,X=C_2H_4)の平面構造をX線結晶構造解析により確認した。これら錯体と子牛胸線DNAとの相互作用様式や結合定数(K)を検討した結果,Xが脂肪族の場合はグルーブに静電結合し,K=2-35x10^3M^<-1>(Cu),1-1.6x10^3M^<-1>(Ni)の範囲の値を示すが,Xが芳香族の場合は塩基対間にインターカレートし,K=2-53x10^4M^<-1>(Cu),1-2x10^4M^<-1>(Ni)と高い値を示した。また,X=芳香環のCu(II)錯体はATサイト選択性を示したが,切断活性は示さなかった。Ni(II)錯体は,酸素化剤(H_2O_2,K_2S_2O_8)の存在下でプラスミドDNAを切断し,切断活性はX=C_2H_4が最も強く,DNAとより強く結合するX=C_6H_4の場合はインターカレーションにより活性点が立体障害を受ける傾向が見られた。類似のカチオン性マンガン(III)錯体は光照射下でプラスミドDNAを切断し,切断活性はX=C_3H_6<C_3H_4<C_6H_4の順に増加するという興味ある結果を示した。 一方、[12]aneN_3錯体の燐酸トリエステルカロ水分解能は,PH=7でCo(II)<Ni(II)<Zn(II)<Cu(II)の順に増加し,高活性なCu(II)錯体は燐酸ジエステルやDNAを加水分解により切断した。しかし,これら錯体をシッフ塩基錯体と複合させる試みは未だ成功しておらず,切断選択性の検討は今後の課題である。
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