研究概要 |
電極/溶液界面における水分子の挙動を明らかにすることは,電気化学の本質を理解するうえで極めて重要である.本研究では,時間分解赤外分光法を用いてこれを検討した.研究成果は以下のとおりである. 1.単結晶電極の作製 真空蒸着法,ならびにClavirie法によって金属(111)単結晶電極を作製した.ここで,(111)面で構成される金属微粒子を作製する技術を獲得したが,これによって赤外分光の測定感度を格段に向上させることができた.(従来の測定では,一回の測定に数十分から数時間を要していたが,数秒から数十秒まで短縮することができ,界面における水分子の動的挙動を検討することが可能になった.) 2.支持電解質アニオンの影響 吸着力ならびに水分子との水和力の異なるアニオンを用いて検討した.金に対する吸着力が最も弱い過塩素酸イオンの場合,印加する電位によって界面の水分子は4種類の構造をとること,正に帯電した電極表面では氷状の構造をとること,アニオンの吸着により,水分子の構造が大きく変化すること,疎水性のアニオンが吸着することにより,水素結合していないOH基ができること,などを明らかにした. 3.銅のunderpotential depositionにおける水分子とアニオンの挙動 アニオンの吸着によって銅原子が規則配列をとることを示唆する結果が得られ,従来提案されていたモデルの正当性を確認した.また,銅原子ならびにアニオンの吸着により界面の水分子の構造が大きく変化すること,アニオンと水分子が強く相互作用していることを明らかにした.吸着イオン種が硫酸イオン化硫酸水素イオンかという従来の議論に対して,その中間状態にあり,電位,電極表面状態の変化に応じて平衡がどちらか一方にシフトすることを見いだした.
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