研究概要 |
これまでにMOCVDにおける薄膜形成について多くの研究がなされてきたが、それらの多くは膜質、成膜速度、等のマクロスコピックな研究であった。シリコンやGaAs薄膜形成については、いくつかの原子レベルでの研究も報告されているが、InP,GaP等の燐系の化合物半導体薄膜形成についての報告はほとんどないのが現状である。 従って、本研究では基板としてSi(111),Si(100),GaP(001)を用い、有機金属ガスの、トリメチルリン(TMP)、トリエチルリン(TEP)、タ-シャリブチルリン(TBP)、トリエチルインジウム(TEI)をそれらの基板上に吸着させ、吸着状態、分解反応機構を詳細に研究した。 本研究における主な成果を以下に述べる。 (1)Si(111)7x7表面ではTMPはセンタードアドアトムサイト(centered adatom site)に優先的に吸着する。 (2)TEIおよびTEPはSi(100)、GaP(001)に室温で分子状に吸着し、昇温するとエチレンと水素に分解して、表面にIn,Pを残す。 (3)TBPは室温でSi(100)、GaP(001)上で部分的に解離して吸着し、昇温するとイソブチレンと水素に分解し、表面にPを残す。 (4)TEI、TEP、TBPはSi(100)およびGaP(001)上でβ-水素解離反応で分解する。 (5)水素共存下でのTEI、TEP、TBPの分解反応はGaP(001)ではおおきな影響を受けるが、Si(100)では影響を受けない。これはGaP(001)では水素が解離吸着し、Si(100)では吸着しないことによる。 (6)TEI、TEP、TBPのSi(100)およびGaP(001)での分解反応機構を提案した。 以上の成果はMOCVD,ALE(原子層エピタキシ-)法において有機金属を用いて半導体のヘテロ接合の第1層形成機構を明らかにしたものである。これらの成果はヘテロ界面を有する半導体デバイスを形成するうえで貴重な指針を与える。
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