研究課題/領域番号 |
07640780
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
機能・物性・材料
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研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
小林 速男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (60057635)
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研究分担者 |
内藤 敏雄 北海道大学, 理学部, 講師 (20227713)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 分子性金属 / 反強磁性 / 金属-絶縁体転移 / 磁気転移 / π-d相互作用 / π-d電子系 |
研究概要 |
局在磁気モーメントとπ金属電子が低温で共存する最初の分子性金属の開発を目指し、我々は磁性イオンを対イオンとするπドナー分子BETSの形成する分子性金属を作成し、1992年に国内の学会で新規分子性金属k-BETS_2FeCl_4、引き続きλ-BETS_2FeCl_4を報告した。同じ1992年に英国のP.DayらによってCu^<2+>をふくむBEDT-TTF(ET)の低温まで金属性を保持する化合物が報告されている。今回の一般研究(C)の申請書に示したように、我々の報告したBETS伝導体はBEDT-TTF系に比べ安定な二次元π金属状態を形成する事に遥かに優れており、予想通り今年度、Fe^<3+>だけではなくCu^<2+>,Co^<2+>,Mn^<2+>等の磁性イオンを含む多くのBETS金属を報告する事が出来た。特に以前より大きな注目を集めていたλ-BETS_2FeCl_4については最近研究が進展し、磁化の異方性が配向多結晶試料によって測定され、また、以前のデーターに曖昧さがあったESRについて再実験がなされた。ESR線幅は8K近傍で線幅が鋭い上昇を示した後、急減すること、また、8K以下で磁化の異方性からFe^<3+>の高スピン磁気モーメントが反強磁性磁気構造をとること、磁化容易軸は結晶のc軸方向であること等が判った。ESR強度の温度変化は金属状態でFe^<3+>イオンの間に反強磁性相互作用が働いており、Weiss温度が大きく(-23K)、8Kで反強磁性転移と金属一絶縁体転移が同時に発生する事からπ-d相互作用が低温物性を支配している事が予想される。反強磁性磁気構造の発生によってもたらされる新たな周期ポテンシャルがπ電子のフェルミ面を消すという従来の分子性金属系には見られない新たな事態が実現している事が予想され、今後の発展が期待される。また、4Kまで金属状態を保持するθ-BETS_4Cu_2Cl_6では常温磁性イオンCu^<2+>が二つの塩素原子で架橋された平面複核錯体[Cu_2Cl_6]^<2->を形成し200K近傍になだらかな極大をもつ常磁性を示し、やはり磁性、伝導性両面に興味深い特性を持つ分子性金属系が得られている事が判った。
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