研究概要 |
分子間水素結合能を有するリン脂質,ジミリストィーフォスファチジルエタノールアミン(DMPE)の集分特性と、それに対する水の役割を示差走査熱量測定(DSC)を用いて,リン脂質のゲル-液晶相転移現象と凍結水の融解現象から検討した。またDMPEの2分子膜構造に関する知見は電子顕微鏡観察から求めた。低温領域においてDMPEは2分子膜構造に基づく,ゲル相,準安定結晶性構造,最安定結晶性構造の3種の2分子膜構造体を選択し,これらの構造体は層間水量の点で異なっていることを明らかにした。すなわち,凍結水の水融解エンタルピーを求めることによって,ゲル相はDMPE1モル当り3H_2Oの層間水を隣接する層間に取り込んでいるのに対して,準安定結晶性構造では2分子膜を構成するリン脂質に直接結合した1H_2Oの水分子を水素結合でつなぎ止めた1H_2Oを層外に放出した残りの2H_2Oの水分子を取り込んでいることも明らかにした。さらに、最安定結晶相ではこの2H_2Oの水分子も層外に放出し,隣接する2分子膜相のリン脂質が直接の水素結合を形成していることを明らかにした。この結果は電子顕微鏡観察の結果にも対広し,ゲル相が層間水を取り込んだ2分子膜多重層構造,準安定結晶相が2分子膜が数層積み重なったベルト状構造,再安定結晶相が三次限的構造体であった。
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