研究概要 |
アルケニルエーテルとアルコールを弱酸で処理してアセタールを生成させる反応は,有機合成反応の要と言える炭素-炭素結合生成反応やヒドリド還元反応等の非水系強塩基反応において,反応に関与しない水酸基を保護する反応として数え切れない合成反応に応用されてきたが,一方で生成するアセタールの不斉が全く制御できない事から,単離精製や化合物の精密なアサイメントに意味のない苦労を有していた。筆者はこの問題を解決するために,精製するアセタール炭素の不斉を完全に制御できるアルケニルエーテルの分子設計を行い,bicyclo[3.3.0]型骨格がシスフューズのみを安定に与える事を利用した新規なアルケニルエーテルを合成し,その完全不斉制御が目論見通り成功を収めた。まず最初にその不斉制御の実態を探る意味で,dl体を用いて,ジアステレオ選択性から検証した経緯のため,次に標的化合物を光学活性体として合成する事に着手した。鍵反応として行ったパラジウム触媒反応を市販の光学活性ホスフィン6種を触媒配位子として検討したが,残念ながら未だ10〜20%エナンチオマー過剰率しか得られず,満足のいく結果となっていないが,まだこれから様々に反応条件を検討する予定である。一方,dl体とはまったく異なる合成経路も検討した。その鍵となる反応段階はプロキラルなジオールの酵素による不斉酢酸エステル化反応であるが,これは90%ジアステレオマ-過剰率を得ることができ,難関と思われた反応段階もクリアし,まもなく予定の化合物を光学活性体として得る事ができる予定である。
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