中性子捕獲に伴い発生するX線の状態分析への応用の可能性を実験的に明らかにすることを本研究の目標とした。まず、測定系の設計と製作について基礎的検討を行った。測定系の設計に際しては、従来の即発γ線分析システムを基本とした。これにX線スペクトル測定に必要な回路類を組み合せて、全体の測定系とした。金属箔等を対象に中性子ビームの照射と同時にX線スペクトルを積算したところ、良好な効果を得ることが出来た。即発γ線スペクトルも合わせて測定し、測定系を最適化した。各元素の検出感度をX線測定とγ線測定の場合で相互比較した。半導体検出器の検出効率の入射フォトン依存性にもよるが、X線検出でむしろ良好な感度が得られる元素が見出された。しかし、定量分析に適用するためにはマトリックス補正なども必要となった。また、X線の自己吸収についても補正が必要であった。このような留意点もあるが、定量分析法としてのX線検出のメリット及び特徴が明らかとなった。これに付随して、X線スペクトルのサテライトピークの強度変化の解析のためのスペクトル解析ルーチンの作成と改良を実施した。γ線スペクトルの解析などにも適用し、放射化分析などに応用して成果を得た。酸化状態、化学結合における共有結合性、配位数などによるX線スペクトルの構造変化については、検出器の分解能に関して改良の余地があることが示された。これは将来の研究課題として残されたこととなる。しかし、分子軌道計算などに関する検討は順調に進行し、スペクトル解析結果を解釈し得る状態に導くことが出来た。
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