研究概要 |
(1) 雨水を汚染している物質には,海塩粒子,土壌粒子などがある.これら汚染物質のグループ分けのために,「雨水のための化学平衡を考慮した因子分析法」を開発した.さらに,抽出された汚染起源の寄与の数量的な評価法を開発し,学会誌に発表した. (2) 平成7・8・9年度の3カ年,兵庫教育大学と秋田大学で降水の採取・化学分析・解析を行い,2箇所における降水の化学組成の違いを調査した. (3) 数km圏内の狭い地域内における降水の地域差を調べるために,(A)兵庫教育大学周辺,(B)瀬戸内海に近い兵庫県赤穂市,(C)滋賀県琵琶湖大橋周辺において,それぞれ,7-14箇所で採水を行った.硝酸イオンや硫酸イオンの地域差は少なく,カルシウムイオンの地域差が大きかった.赤穂市でマグネシウムイオンの特定発生源を見い出した. (4) 一雨の分別採水装置と,降水時の気圧,気温,降水量を自動計測する装置を完成させた.雷雨,低気圧,前線などの気象的要因が溶存イオン量に違いを与えること,初期降雨から後続降雨になるにつれ雨水中の化学種濃度が減少することを見い出した. (5) ガラス電極法を用いて,pHから水素イオン濃度を見積もる場合,大きな測定誤差を与える場合があることを見い出した.これは,参照電極の液絡部に発生する液間電位のためである.そこで,水素イオン濃度が正しく定量できる高精度ミクロ滴定装置を完成し,液絡部の液間電位発生機構について検討した.
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