研究概要 |
タンパクキナーゼ族、免疫グロブリン族、ロドプシン族、チロシンホスファターゼ族をはじめとする多くの遺伝子族・超遺伝子族について、組織特異的遺伝子の進化速度に関する解析を完了した。その結果、同一(超)遺伝子族内で、脳や神経系で発現する遺伝子メンバーは他の組織で発現するものより進化速度が低いこと、および、免疫系で発現する遺伝子メンバーは進化速度が高くなる傾向が、ほぼ普遍的に観察された。他の組織・器官、例えば筋肉や肝臓で発現する遺伝子メンバーは、両者の中間的な進化速度を取ることが多いが、これらを含んだ進化速度の高低関係については、明確な結論が得られず、今後、詳細な解析を継続して行くつもりである。現在、研究報告者は、このような組織特異遺伝子の成立に関して興味を持ち、共同研究者と共に種々の解析を行っており、予備的な結果も既に幾つか出ている。26の遺伝子族を用いた詳細な解析では、様々な器官・組織が生じた脊索動物の初期進化において組織特異的遺伝子の重複が急速に起きており(81回中63回)、その時期にタンパクの進化速度も上昇していた。特に、プロテインチロシンキナーゼ超遺伝子族においては、そのサブグループである、JAK,src,FGFR,eph,インシュリン受容体などにおいても独立にこの傾向が見られる(菅ら、1997)。また、このような組織特異的遺伝子の重複が急速に起きた時期は、アルドラーゼ遺伝子の解析から、四足動物と硬骨魚の分岐以前かつ、脊索動物と頭索動物であるナメクジウオの分岐以降であることが判っている(二河ら、1997)。我々は、この時期をさらに限定するために、FGFR,eph,キネシンなど、組織特異的遺伝子の重複が観察される遺伝子族について、円口動物であるメクラウナギから配列を決定することを試みている。
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