研究概要 |
茨城県北部の植生は暖温帯の常緑広葉樹林から冷温帯の落葉広葉樹林への移行域に位置している。冷暖温帯移行域にはクリ,コナラ,シデ類,カエデ類等の落葉広葉樹林が成立する。移行域の二次林の主な構成種であるコナラ,アカシデ,クリの成立機構に関して,実生の成長と生残,稚樹及び樹冠部でのシュート動態及び生理生態的特性より,以下の点が明らかになった。 (1)林冠木の優占種がコナラとクリ(樹齢役20年,樹高10〜12m)である萌芽林の現在量を2ケ所で推定した。コナラとクリで胸高断面積の66%を占めた。伐採木より胸高直径と生物量の相対成長関係を求め,現在量を推定した。現在量は461.6と590.5kga^<-1>であった。 (2)3種の樹冠部上層及び伐採跡地の稚樹の最大光合成速度は8〜10,樹冠部下層は3〜4μmolCO_2m^<-2>s^<-1>を示した。上層及び稚樹の最大光合成速度はクリ,コナラ,アカシデの準順低下した。 (3)コナラ,アカシデの実生更新に上層植物が与える影響を調査した。ギャップ区,ササ刈り取り区,低木刈り取り区,無処理区を設定し,実生の成長と生残を調べた。ギャップ区のみが成長率と生残率が高かった。ギャップでしか実生更新が起こらないことが推察された。 (4)シュート伸長はコナラとクリは稚樹,成木とも1次シュートが伸長後,2次シュートを形成した。一方,アカシデは稚樹では1次シュートのみを長期間伸長させ,高木では他の2種と同様に高次のシュートを形成した。 (5)アカシデはコナラやクリよりも葉の寿命,個葉の面積,比葉重,単位長さ当たりの茎重等が有意に小さかった。アカシデの単位葉面積あたりの茎長はコナラの3倍,クリの5倍であった。これらのシュート伸長様式・構造及び葉の動態が,小さな種子重を有するアカシデがコナラ,クリと同所的に林冠木を形成するのに大きく寄与していると推察された。
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