研究概要 |
本研究では,盗み寄生者であるイソウロウグモとその宿主である造網性クモの間の相互関係,およびイソウロウグモ同士の相互関係について明らかにすることを目的とした. 調査は,イソウロウグモ類の個体数の多い沖縄県の名護市名護城と今帰仁村諸志,今帰仁城跡で行った. 以下に今回の調査から明らかになった主な結果と考察について記す. 1.重回帰分析の結果から,宿主の網上におけるアカイソウロウグモの個体数には,宿主の餌条件が関与していると考えらえた.また、アカイソウロウグモを網から除去する野外実験により、網上での個体数は飽和状態に近いと考えられた. 2.アカイソウグモの個体間には,網上の特定の位置をめぐる種内競争がみられた.つまり,大型個体が餌捕獲にとって有利な位置を占める傾向があった.また,アカイソウロウグモを除去した網へ侵入してくるアカイソウロウグモは,小型個体が多かった.これは,種内競争によって小型個体が網から締め出されることを示唆している.しかし一方で,こうした種内競争の強さや働き方は,餌条件や密度によって異なることも明らかになった. 3.アカイソウロウグモとシロカネイソウロウグモの間には弱い種間競争がみられ,前者の存在が後者の個体数に対して負の影響を与えていることが明らかになった. 4.イソウロウグモ類の個体数が,宿主の造網場所の移動頻度に与える影響は認められなかった.一方,アカイソウロウグモが宿主から盗む餌量は,全体の19%程度であると推定された.したがって,イソウロウグモ類が宿主に対して負の影響を与えている証拠は見いだせなかった。
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