リン酸は窒素と伴に地球上で植物の生育を制限している栄養素である。その欠乏の影響を調べるために、トウモロコシを0.5mMと0.001mMのPi下で生育させ、成長及び光合成的CO_2固定に及ぼす影響の解析を行ってきた。その結果、リン酸欠乏は生長の抑制、クロロフィル含量の低下、光合成の阻害、光合成炭素代謝関連の酵素活性の低下、下位葉におけるタンパク質の分解とそれに伴う窒素の上位葉への転流の促進、更に、下位葉の老化の促進をもたらすことを明らかにしてきた。このリン酸欠乏により引き起こされる下位葉におけるタンパク質の分解、老化の促進の仕組みを明らかにするために、2次元電気泳動によりタンパク質のパターンの変化を追跡した。その結果、リン酸欠乏によりタンパク質の分解、老化が促進される第2葉で以下のことを明らかにした。可溶性タンパク質は2次元電気泳動により450以上のスポットにわかれた。播種後12日の第2葉ではコントロールとリン酸欠乏下で生育したもののこれらのタンパクのパターンは完全に同じであった。コントロールの葉でも生育ステージが進むと、新たなポリプペチドが2つ出現した。また相対含量が増えるスポットが一つあった。一方、リン酸欠乏下で生育したものでは11のポリペプチドの相対含量が減少し、18のポリペプチドの相対含量が増加した。このうち10のスポットはリン酸欠乏により促進される老化過程でのみ検出されたこれらのポリペプチドについて老化時に存在量が増えることが知られている既知のポリペプチドと分子量を比較することなどによりその役割等について考察した。
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