研究概要 |
微生物との相互作用において機能するマメ科植物フラボノイドの生合成鍵反応に関与する次の酵素について,遺伝子クローニングと発現解析を通じて反応機構と生理機能を検討した. 1.6′-Deoxychalcone synthase(DOCS):エリシター刺激したカンゾウ(Glycyrrhiza echinata)培養細胞より,5-デオキシ型の活性フラボノイド生合成の導入酵素DOCSのコンポーネントchalcone synthase(CHS)とpolyketide reductase (PKR)cDNAを得た.PKRは大腸菌で過剰発現させ,アントシアニン色素を生産する西洋タンポポ細胞の粗酵素液と組み合わせて酵素活性を確認した.CHSとPKRをともに大腸菌で発現させることによりDOCS反応機構の解明に利用できると期待される. 2.O-メチル転移酵素(OMT):アルファルファ根のメチル化カルコンは,共生窒素固定細菌のnod geneを誘導する強力な化学シグナルである.この化合物の生成に関わるchalcone methyltransferase(CHMT)は,カンゾウではエリシター処理で誘導されるlicodione methyltransferase(LMT)の活性も持つことを見い出した.またカンゾウからCHMTとLMTの両活性を持つ酵素のcDNAがクローン化された.カンゾウOMTの機能を知るため,CHMT活性を持たないLMTを精製中である 3.Cytochrome P450(P450):同じ基質(liquiritigenin)に対する異なるP450が,構造と機能の異なるフラボノイド生合成分岐に関与している.カンゾウcDNAライブラリーより数種類のP450 PCR断片を得,これよりcinnamate 4-hydroxylase及び2種の機能未知の全長cDNAクローンを分離した.これらのエリシター刺激に対する発現パターンより,マメ科植物細胞の対微生物応答における生理機能が示唆された.
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