研究概要 |
ラフィド藻Heterosigma akashiwoの葉緑体は,Dinoflagelateを除く他のChromophytaの葉緑体と同様に,4枚の膜で包まれている.このようなChromophytaの葉緑体の起源については,いわゆる二次共生説が有力である.その最も有力な証拠は,CryptomonasやChlorarachnionにおいて外側の2枚と内側の2枚の間のスペースにヌクレオモルフとリボソームが存在することである.しかし,他のChromophytaについては,特に証拠はなく,外側の2枚の膜の起源が二次共生説によって説明できるというのみであった. 本研究の目的のひとつはH.akashiwoの葉緑体においても分裂リングが存在するかどうか,存在するとすれば4枚の膜のどの膜上に存在するかを明らかにすることである.今回の研究において,化学固定では固定が困難であったH.akashiwoの細胞を急速凍結-凍結置換法によって固定する方法を確立した.その結果,葉緑体分裂リングが本藻にも存在し,内側の2枚の膜の外側表面に局在することが明らかになった。この結果は,葉緑体分裂リングの普遍性をさらに支持するものであり,二次共生説を強く支持する新しい知見である.また,外側の2枚の膜は内側の膜とは異なる機構で分裂することも明らかになった.これらの研究成果は,1編の論文としてProtoplasma誌に掲載予定(1997)で,現在印刷中である. 葉緑体分裂リングを構成するタンパクが核ゲノムにコードされていること,さらに,アクチン様タンパクである可能性が強いことが筆者らの研究によって示唆されている。蛍光抗体法やロ-ダミン=ファロイヂン染色などによってアクチンの存在について検討を行ったが現在のところその存在を示す証拠は得られていない.蛍光染色のための固定が困難であったためでさらに検討が必要である.
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