研究概要 |
(1)卵エクジステロイドを分析した結果,これまで報告されている10種類の遊離型エクジステロイドとそれらの抱合型(リン酸エステル)に加えて,今回新たに3種の遊離型エクジステロイドとそれらのリン酸エステルを検出した.それらを主にNMRによって構造を解析し,2,22-dideoxy-23(S)-hydroxyecdysone,2,22-dideoxy-23(S)-hydroxyecdysone 3-phosphate,3-epi-22-deoxy-16(β),20-dihydoxyecdysone,3-epi-22-deoxy-16(β),20-dihydroxy-ecdysone 2-phosphate,3-epi-22-deoxy-22,26-dihydroxyecdysone,3-epi-22-deoxy-22,26-dihydroxyecdysone 2-phosphateと決定した.これらは新規エクジステロイドであった. (2)酵素的に合成された放射性エクジステロイドを卵へ微量注入することによって,卵エクジステロイドの代謝を調べた.その結果,休眠卵ではecdysteroid kinaseの作用によりエクジステロイドは不活性化される方向に,逆に非休眠卵ではecdysone 20-monooxygenaseとecdysone phosphataseの作用により20-hydroxyecdysoneが増加する方向に調節されていることが明かとなった.また,実際にecdysone 20-monooxygenase活性の測定したところ,本酵素は休眠卵ではほとんど発現しないが,非休眠卵では産卵後2日目から徐々に発現し3日目以降は急激に活性が増加することが明かとなった. (3)エクジステロイドレセプター(USP-EcR complex)と卵エクジステロイドの親和性を検討するために,クローン化されたカイコのエクジステロイドレセプターcDNAを用いて大腸菌の発現系によってエクジステロイドレセプターの調製を試みた.USPサブユニットを大腸菌(DH5-α)の発現系(pGEX4T-3)を用いて調製することは可能であったが,EcRサブユニットはUSPの調製と同様の方法では得ることは出来なかった.現在発現系などの条件を検討中である.
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