研究課題/領域番号 |
07640910
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
動物生理・代謝
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
井内 一郎 上智大学, 理工学部, 助教授 (10011694)
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研究分担者 |
安増 茂樹 上智大学, 理工学部, 助手 (00222357)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | ニジマス / メダカ / 卵膜 / 卵膜硬化 / トランスグルタミナーゼ / 受精 / γ-グルタミル-ε-リジン |
研究概要 |
魚類卵は受精および卵付活後卵膜が硬化するため強靭になる。卵膜硬化は卵膜構成タンパク質の高分子化(重合)による。この反応がトランスグルタミナーゼ(TGase)によることは、我々をはじめ何人かの研究者により指摘されてきたが、その生化学的研究は行われていなかった。TGaseはタンパク質間にγ-グルタミル-ε-リジン(γ-Glu-ε-Lys)架橋を作ることによって、それらのタンパク質を高分子化(重合)する酵素である。 ニジマス卵膜のγ-Glu-ε-Lysイソペプチド含量を測定してみると、卵膜硬化にともないその量が増大しており、ニジマス卵の卵膜硬化でもTGaseが関与していることが示唆された。そこで、Lorand and Gotoh (1970)の方法によってニジマス未受精卵のTGase活性を測定してみると、TGaseは卵膜画分に局在していた。この卵膜TGaseは生理食塩水(142mM NaCl-10mM Tris・HCL, pH7.2)中でホモジナイズすることにより抽出できたので、その生化学的な性質を調べた。卵膜TGaseは、Ca^<2+>-依存性のSH酵素であり、カダベリンなどのアミン誘導体により阻害される。また、40℃以上の熱に不安定で、至適pHは6.0であった。高イオン強度の食塩水でよく洗浄したTGaseを持たない卵膜に、抽出調整したTGaseを加えてみると、卵で起こっているのと同様の卵膜構成タンパク質の高分子化が再現された。このin vitroでの卵膜構成タンパク質の高分子化はカダベリン誘導体で阻害される(井内)。 一方、卵膜を低イオン強度(10mM Tris・HCl, pH7.2)下でホモジナイズしてみるとTGaseは抽出されなかった。さらに、TGaseは、このような低イオン強度下において卵膜にすばやく結合することから、卵膜と特異的に相互作用するものと考えられる。また、このTGaseを10mM Tris・HCl (pH7.2)に対して透析すると活性が3〜4倍上昇した。自然状態でニジマス卵は淡水中で受精・発生するので、卵膜TGaseのこの性質は、淡水中で卵膜硬化がすみやかに起こるための都合のよい性質であると考えられる(安増)。 メダカ卵においても同様の結果を得ており、魚類卵膜は硬化に関与する酵素と基質が共存する機能的構造体を成していると考えられる。
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