研究概要 |
1.両生類の皮膚には、体色に関わる色素としてプテリンと総称される低分子化合物が蓄積することが知られている.プテリンは強い蛍光を発するので、容易に検出することができる利点を有している.本研究は、変態時のウシガエル(Rana catesbeiana)幼生皮膚のプテリン動態を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いて調査することを目的とした.幼生の皮膚は、体部と尾部で変態時の運命が異なる興味深い対象である. 2.皮膚の抽出液に含まれる主要なプテリンは、ビオプテリンであった.オタマジャクシの体に含まれるビオプテリンの99%が皮膚に局在し、その90%以上が、酸化型と推定された. 3.変態最盛期の二匹のオタマジャクシを、小ガエルになるまで飼育した.変態最盛期に飼育水に出現したビオプテリン量は、それぞれ175μg,123μgであった。一方、変態最盛期前のオタマジャクシの尾部皮膚に含まれるビオプテリンは、119μgであった.また、約二週間に渡る変態最盛期の前後で、体部皮膚のビオプテリン量に明らかな差が認められない.以上の結果から、飼育水に出現するプテリンが主として変態最盛期に退縮・消失する尾部に由来することが示唆された.プテリンは尿中に排出されるものと思われる. 4.オタマジャクシ、変態後の小ガエル、成体のカエルのいずれの発生段階においても、ビオプテリンが皮膚の主要なプテリンであった。しかし、成体のカエル皮膚ではイソキサントプテリンが減少し、代わりに6-ヒドロキシメチルプテリンが増加した.変態終了以降、プテリン代謝が徐々に変化することが示唆された. 本研究により、無尾両生類の変態にともなう尾部退縮の指標として、プテリン排出現象が有用であることが示唆された.
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