研究概要 |
被子植物はがく,花弁,雄蕊,雌蕊の各器官で構成される花を持つことが特徴であり,この花はいろいろな群で多様な形態に分化している.本研究は,被子植物の花の起源とその初期進化にを解明する目的で花に原始的形態を残していると認められている被子植物と裸子植物を用い、花の形態形成に重要な働きをしていると考えられているMADS-Box遺伝子の単離と解析を行った。 材料として被子植物のコブシ(モクレン科),ドクダミ(ドクダミ科),タガラシ、シュウメイギク、センニンソウ(キンポウゲ科),および裸子植物のイチョウ(イチョウ科)を用いてRT-PCR法によりMADS-box遺伝子のクローニングを行った.その結果、各植物で15,12,14,10,13,5個のMADS-box遺伝子の単離に成功し、その塩基配列を決定した。今回得られた各遺伝子の塩基配列と既知のMADS-box遺伝子の塩基配列を用いて分子系統樹を作成した。その結果、各植物からのMADS-box遺伝子は同一のクラスターにならず、それぞれがサブグループを形成する系統樹が得られた。これは被子植物の進化の初期においてMADS-box遺伝子がすでに多様に分化していたことを示している。また、裸子植物から被子植物への進化、および被子植物での進化の過程においてMADS-box遺伝子が遺伝子重複し、それぞれ異なった役割を担うようになったことを示唆する結果も得ている。 それぞれの植物において各遺伝子がどのような役割を果たしているかを比較するため、in situ hybridizationによる解析を行った。現在、この解析が完了したのはドクダミのAGホモログであるHAG1遺伝子だけであるが、HAG1はAG遺伝子と同様に雄蕊と雌蕊で発現が見られた。
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