研究概要 |
5SrRNA遺伝子がそのほかのrRNA遺伝子とどのような位置的関係を持って存在しているかという観点から,黄色植物を中心とするクロミスタ生物群の系統を再検討した.そのためクロミスタの各綱をなるべく網羅するよう調査する種を選定し,抽出されたDNAにつきPCR法により18SrDNAと25SrDNAに挟まれた部分を増幅し,その産物につき再びPCR法で5SrDNAを含む断片(18S-5S, 25S-5S, 5S-5S)を増幅し,その有無を解析するとともに,増幅産物については塩基配列を決定した. 以上の解析の結果,褐藻,黄金色藻,黄緑色藻,ラフィド藻,真眼点藻,ハプト藻,渦鞭毛藻,繊毛藻,ミドリムシ藻等で5SrDNAが他のrDNAとリンクして存在していることが確認された.一方,珪藻,シラヌ藻では陸上植物の場合と同様に5SrDNAだけが他のrDNAとは異なるサイトに反復して存在していることが明らかになった.これらのうちミドリムシ藻や,すでにリンクした5Sの存在が報告されている粘菌類は真核生物の進化の早い時期に分岐していることが知られており,逆にこれまでに5Sのみが反復していると報告されているグループは進化の上ではむしろ新しいグループに限られる.これらの結果から他のrDNAとリンクした5SrDNAの存在は,一部に例外は見られるがクロミスタ生物群では一般に見られる特徴であり,原始的な真核生物では原核生物同様リンクした配列を持っており,その後5S部分が離れて反復した可能性を示唆している.
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