研究概要 |
本研究は、日本産タナゴ類の分岐分類によって提唱された3属について、分析形質セットの特徴から、3属の仮説が中国や朝鮮半島のタナゴ類にも適用されるか否かを検証することを目的とする。 結論として、3属の仮説は中国や朝鮮半島のタナゴ類にも適用されることが、形態形質およびミトコンドリアの遺伝子による系統解析によっても反証されなかった。以下に具体的な研究成果を年度ごとに報告する。 1.平成7年度は中国の採集標本および海外の博物館から借用した標本を基にして分類学的に混乱している種の整理をした。すなわち、Rhodcus sinensisの地理的変異、体色斑紋を研究、また、中国から初めてTanakia lanccolataを発見した(Arai et al,1995)。 2.平成8年度は中国、浙江省で染色体数2n=46の種を発見した(Ueda et al.,1996)。また、アジア大陸および日本のタナゴ亜科魚類の系統解析のため、日本産15種-亜種、中国産9種-亜種、朝鮮半島産1種、ヨーロッパ産1種の頭部感覚管の比較解剖を行った。 3.平成9年度はアジア産および日本産のタナゴ類のミトコンドリアの12S rRNA遺伝子の塩基配列を研究し、分子系統樹を構築した。その結果、形態および分子による系統樹に矛盾は見られず、Acheilognathus属の単系統性が確認された。また、中国産タナゴ2種の核型を明らかにする(Ucda et al.,1997)とともに、Rhodeus sinensisの種の整理を終えた(Akai and Arai,1998)。
|