研究概要 |
ゾル-ゲル法は,低温で無機非晶体を作成できることから,従来にない有機無機複合体の合成方法として注目されている.その複合体中の有機物質の電子構造に着目したもので,(1)有機分子として,媒質に敏感であるポリフェニール(PP)系分子のpーターフェニル(TP)を用い,それをガラス中に分散させる合成条件を検討した.そして,(2)その有機分子の電子構造に関する知見を得るため分光法による測定を行い解析した。 (1)ゾル-ゲル法による試料作成は,原料の混合比によってゲル化の速度が異なる,反応速度のコントロールが比較的難しいため困難が多い.今回,ピンホール法の開発により安定な作成が可能になった.有機分子はエタノール液中に溶解させ,ゲルガラスに分散させるが,その量が10^<-2>mol/l以上ではゲルガラスが白濁し,有機分子が凝集することが分かった.また,(2)出発溶液の含まれている酸の影響は,吸収・蛍光スペクトルの測定からは見られなかったが,ゾル-ゲル法で作成した非晶質固体は,室温で乾燥させただけでは水分やエタノールや未反応のアルコキシド基が残っており,そのため吸光度は著しく小さかった.そこで,良好なゲルガラスを得るには、温度60℃、湿度50%で20日間程度の乾燥が必要なことが分かった. 次に,これらの分子の励起三重項状態からの発光は,その減衰時間が長いため分子周囲の環境の影響を受けやすい.そこで,パルス光励起による遅延蛍光の減衰を観測するシステムを構築し,測定した.TP分子からの発光の減衰曲線は複雑な減衰をしている.解析の結果,ガラス中ではTP分子が100Å以上の距離を離れて分散しているにもかかわらず、励起エネルギーが分子間を移動し蛍光が減衰する三重項-三重項消滅のモデルで説明できた.
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