研究概要 |
1)金属表面上の吸着分子の光誘起脱離 紫外領域から可視領域の超短レーザー光パルスを金属表面に照射すると吸着分子が脱離してくる.このような光誘起脱離現象のメカニズムの理解を深めるため,光吸収による電子励起の空間的・時間的局在性に着目し,吸着分子の脱離軌道を計算した.得られた結果に基づいて,脱離確率が示すパルス光のエネルギー・パルス幅・表面内部への侵入長依存性を明らかにした. 2)金属表面から会合脱離してくる水素分子の回転軸整列:動的量子フィルタ 配向依存性を示す活性化障壁は,いわば量子フィルタとして,会合脱離しようとする水素分子の回転状態(回転量子数とその表面垂直成分)を選別する.選別された分子には,障壁通過直後の回転状態を保って脱離するものや回転励起・脱励起を伴って脱離してくるものがある.このようにして会合脱離する分子の回転軸配向に着目し,カップルド・チャンネル計算を行った.その結果,回転励起した分子は,励起も脱励起もしない分子と同様ヘリコプタ型回転することを見出した. 3)時間分解2光子光電子放出の理論 金属表面近傍に局在する電子状態の超短レーザー光パルスを用いた時間領域分光の理論の定式化を行ったポンプ光によるバルク状態を占める電子の局在状態への移動は,直接過程とバンド間遷移を伴う間接過程からなり,それぞれの過程によって放出される光電子は異なる運動エネルギー分布,異なるポンプ・プローブ遅延時間依存性を示す.特に,この遅延時間依存性の違いから局在状態の寿命などが評価できることを示した. 4)STM探針・金属表面間の原子サイズ接合部分での量子輸送現象と電子相関効果 表面の微細接合領域の電子系をハバ-ド模型で記述し,量子輸送現象に現れる電子相関効果を調べた.その結果,有限温度では,電子間相互作用によりによりサブバンド内やサブバンド間電子散乱過程が誘起されるため,コンダクタンの量子化が著しく損なわれることを見出した.
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