研究概要 |
遷移金属イオン・希土類イオンを含むイオン結晶は可変固体レーザー材料として大変重要である。本研究では酸化物、フッ化物中のCr^<3+>, Ce^<3+>の電子スピン共鳴スペクトルと光スペクトルを測定し、母体結晶がレーザー活性化イオンの基底・励起電子状態に及ぼす効果を調べ、最適な固体レーザー結晶に要求される特性について検討を行った。 固体(結晶、ガラス)中のCr^<3+>の励起電子はまわりを取り囲んでいる配位子イオンと強く相互作用するので、Cr^<3+>の吸収・発光スペクトル幅は広くなる。さらにその幅を広げるために、結晶を構成するカチオンがランダムに分布するCaYAlO_4と、Gdイオンが作る磁場効果を含むCaY_<1-x>Gd_xAlO_4を育成し、Cr^<3+>の吸収・発光スペクトルを測定した。これらの置換型結晶では通常の規則制結晶に比べて光スペクトルの幅は20-30%増加していることを示した。 Ce^<3+>は1電子系であり、基底状態波は4fで、励起状態は5dで表される。LiYF_4, LiCaAlF_6, CaYAlO_4と母体結晶を変えると、Ce^<3+>を取囲んでいる配位子の種類と数および対称性がかわり、その環境(結晶場)がどのようにCe^<3+>の基底状態・励起状態に影響を及ぼすかを調べた。最低基底状態がどの状態に対応するかを電子スピン共鳴スペクトルより示した。また、吸収スペクトルの広がりより、励起状態のエネルギーレベルの分布を推定し、結晶場と励起エネルギー準位の関係を明らかにした。 発光スペクトルの幅がレーザー発振帯域に対応しているので、不規則置換型結晶CaYAlO_4、CaY_<1-x>Gd_xAlO_4が可変波長固体レーザー材料の有力な1つの材料であることを示した。
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