研究概要 |
分光エリプソメトリ(SE)は,数ある計測技術の中で唯一,複素量を広い波長領域で計測するものであることに注目し,その結果として,クラマ-ス・クローニッヒ(KK)関係の束縛条件が,分光エリプソメトリの計測機能を増大させることを,幾つかの実験で証明することができた。 1)KK関係が自動的に満たされるバルクの誘電率を用いることにより,空気/SiO_2(自然酸化層)/Si/SiO_2(埋め込み酸化層)/Siの複雑な構造を持つSIMOXの各層の膜厚をnmの精度で決定できることを示した。 2)SIMOXを熱酸化とHFエッチングを繰り返しながらSi層の薄厚をnmの領域にいたるまで減少させ,Si層の誘電率にサイズ効果が発現することを監視した。その過程で,Si層が10nm以下になると,埋め込みSiO_2層の膜厚に揺らぎを導入する必要が生じることを見いだした。誘電率のサイズ効果を監視するためにはバルク値を使えないので,KK関係を予め満たす半導体の誘電率を与えるモデル誘電関数(MDF)を用いてそのパラメータを調節したところ,Si層の厚さが5nm以上では誘電率がバルクと等しく,Si層の厚さが4nmになってはじめてサイズ効果が発現することを見いだした。 3)予めKK関係式を満たし,多くの非晶質材料の誘電率に適用可能な経験的誘電率関数(EDF)を提案し,まず,SiとSi_2N_3の文献値を用いてその適合性を示した。 4)EDFをCVD法で作製したa-Siの実測値に適用し,その熱処理過程における膜厚の減少を計測して含有水素の脱離現象を確認した。 EDFをECRリモートプラズマCVD法で作製したa-SiCに適用し,堆積温度によるストイキオメトリの変化を明瞭に観察した。 EDFをInAs基板の硫黄不活性化層を大気圧雰囲気中に明瞭に検出できることを示した。この成果は硫黄不活性化層の安定化の研究に応用することができ,InAsSb系で作製した中赤外領域デバイスの感度向上に役立てることができる見通しを得た。
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