研究概要 |
中空伝送路のレーザー伝送は,矩形中空部内の平行に配置した2枚の金属反射板でレーザー光が反射を繰り返して行われる.伝送率は金属反射板のレーザー光に対する反射率に依存する.300nmより短波長の紫外レーザーに対して,高反射率の金属はアルミニウムのみである.しかし,市販されている鏡面処理高純度Al板を,更に研磨しても所望の反射率が得られなかった.そこで,リン青銅薄板を精密研磨機(平成7年度申請設備品)で研磨し,研磨面にAlを真空蒸着した反射板を試作した.この場合,Alの蒸着条件(蒸着速度,膜厚,基板温度)によって紫外光反射率,Alとリン青銅との密着性が異なるので,最適な作製条件を実験によって見い出した.また,反射率はレーザー光のもつ偏光状態によって異なり,反射板表面に対して平行な電界ベクトルをもつレーザー光に対して反射率は高い.中空伝送路へのレーザー光の入射角度は,光軸に対して浅い場合に伝送率が高い.実験の結果,Al蒸着燐青銅薄板の反射率はAl薄板に比べて高く,伝送率を向上できた.リン青銅はアルミニウムに比べて弾性に優れるため,中空伝送路の可撓性を向上させることができた.波長193nmのArFレーザーは空気による吸収が強いため,中空導光路の伝送率が低い原因の一つと考えられる.実験の結果,中空伝送路の充填ガスとしてはヘリウムガスが適している.Al蒸着リン青銅反射板を用いて,長さ100cmの中空伝送路を試作し,波長248nmのKrFレーザーの場合,77%の伝送率,110mJ/pulseの放射エネルギーが得られた.ArFレーザーでは72%の伝送率,50mJ/pulseの放射エネルギーが得られた.当初の目標である伝送率90%/mは達成できなかったが,伝送率向上の目処は得られた.これらの結果を基に,レーザーと中空伝送路との入射結合器,放射器(放射ビームの集光系)を設計・試作し,実用化できることを確認した.
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