研究概要 |
液中イオンの電界加速に基づくイオンドラグ力により液体を流動させるマイクロポンプを開発した。加速電極の片側を絶縁物皮膜で覆い電極系を非対称にし,かつ,正負両イオンになりやすい不純物をイオン種として用いることにより,正負電極を交互に配置する構造で多段に加速する機構を考案した。先ず動作確認のために,内径18mm,長さ30mmの6段加圧のポンプを試作した。電極には金属メッシュを用い,絶縁皮膜には予備実験の結果からポリウレタン樹脂を選んだ。実験の結果,電極段数にほぼ比例する加圧力が得られることが分った。さらに,片側絶縁被覆の代わりに別の絶縁被覆金属メッシュ(補助電極)を加速電極間に配置した新構造のポンプを製作し評価した。この場合の流動方向は予想とは逆で,原因は補助電極にイオンシースが生じて逆電界ができるためと考えられる。これを応用すれば,純電気的に逆転可能なイオンドラグポンプ(アクチュエータ)が実現可能である。実際,補助電極付の回転形イオンドラグモータを試作したところ,補助電極の極性により回転方向を反転させることができた。 また更なるマイクロ化のために,シリコンウエハ上にイオン加速用電極を試作した。櫛の幅及び間隔20μm・横幅1.5mm・電極数250連のバリア層付き櫛形電極を形成し,バリア層の窓により櫛の歯の片側半分のみを露出する構造とした。3種類の作動流体(・純水100%,・1ブチルアルコール:純水=1:9,・1ブチルアルコール:シリコーン油=1:1)を用い,DC電圧印加時の電流と流動を観測した。その結果,作動流体・の時,印加電圧約50Vで最大2mm/sの流動が観察され,他の作動流体では同等以上の電流値でも流動は生じなかった。電極間の電界が弱い(<10^3 V/cm)とイオンの速度が遅いためであると解釈できる。つまり,作動流体の電気伝導度も重要な因子である。
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