研究概要 |
本研究では代用電荷法に関する最も基本的課題「代用電荷法の電荷点・拘束点の同時最適配置を求める算法の開発」の研究を行った. よく知られているように,代用電荷法の精度は電荷点・拘束点の選び方に大きく依存する.従来,数値実験に基づいて,いろいろな方法が提案されてきたが,近年,明確な数学的根拠のある方法が岡本・桂田,研究代表者(杉原)によって提案された.前者は電荷点が与えられたときに最適な拘束点を与える算法を与え,後者は拘束点が与えられたときに最適な電荷点を与える算法である.本研究ではこれらの算法を交互に用いるというアイデアに基づいて電荷点・拘束点の同時最適配置を与える算法を開発した.ただし,岡本・桂田による算法の部分は比較的簡単な算法であるのに対して,杉原による算法の部分は最適化法を必要とするため多大な計算時間を要する.したがって,そのまま2つの算法を交互に用いると,電荷点・拘束点の数が多くなると,算法の効率が非常に悪くなり実用的ではなくなる.そこで,岡本・桂田による算法においては本質的に電荷点の最適配置を与える(近似)等角写像を求めていることに注目し,電荷点・拘束点の数が少ない(例えば8点ぐらい)ときに,2つの算法を交互に用いて電荷点・拘束点の同時最適配置を与える(近似)等角写像を求め,それを基に,電荷点・拘束点の数が多い場合の配置を計算する形の算法を開発した.数多くの数値実験の結果,境界が簡単な形状で滑らかならば,開発した算法が十分実用になることを確認した. なお,今後の課題として,本研究で得られた算法が生成する(近似)等角写像は理論的視点からどのような意味を持つのかを解明することが残されている.
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