研究概要 |
卵型の葉身で,羽状葉脈系を持つ桜の葉を用いて,二次葉脈と中央脈との分岐の角度と分岐位置の関係,相互の太さの関係,葉のサイズと各葉脈の配置やサイズ(長さや太さ)の関係など,幾何学的関係を光学計測から明らかにした.また,中央脈や葉身部の引張試験を行い,それらの力学的性質を明らかにし,桜の葉の近似的な力学モデルを構築した.さらに,そのモデルを用いて有限要素法を用いた数値解析を行い,2,3の負荷に対する変形状況を把握した.得られた主な結果は、以下のとおりである。 1.桜の葉においては、中央脈とそれに続く二次脈の間の角度βは、葉幅の広いところでは小さくβ=30°であるが、その他の葉幅の広い部分ではβ=40〜60°であり、二次脈の太さは、葉柄に近いほど太く、また、二次脈の間隔も狭いことが明かとなり、力学的厳しい条件になると思われるところほど、強度の補強がなされていることがかった。また、これらのことは、葉のサイズに関係なく観察され、葉の形状も含めて極めて強い相似性が認められた。 2.中央脈や葉身部の引張試験から、中央脈の縦弾性係数と引張強度は、それぞれ、E=53.7MPa,σ_T=5.6MPaと得られ、葉身の縦弾性係数とポアソン比は、E=13.6MPa,v=0.51程度であることがわかった。 3.葉の力学モデルを用いた曲げ変形の数値計算から、葉身を支持するのに中央脈の寄与が最も大きいこと、均等肉厚モデルにすると極端に剛性が低下すること、二次脈は不均等に荷重が作用した場合に有効であるが、その寄与は小さいこと等が明かとなった。
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