研究概要 |
酸素とアセチレンとの混合ガスの燃焼炎を用いて、金属基板表面にダイヤモンド被膜を合成した。研究の目的はダイヤモンド被膜を金属基板に接合させることである. モリブデン基板の温度が1200Kより低い場合,合成されたダイヤモンドは基板から剥離する.このときのダイヤモンドの結晶形態は,(100)方向に伸長した8面体構造であった.一方、モリブデン基板温度を1400K以上に加熱すると,合成されたダイヤモンドは基板に強固に接合する.このときのダイヤモンドの形態は,数ミクロンの球形であった.X線回折の結果から,ダイヤモンドを接合させている物質は、3酸化モリブデン(MoO_3)と判断される. 赤外線吸収ピークから判断すると、合成されたダイヤモンドのほとんどは、窒素や空孔などの不純物を含むIa型ならびにIb型と分類されるダイヤモンドであった。 コンピュータシミュレーションを用いて、ダイヤモンドと基板の界面で発生する熱ひずみによるせん断応力が計算された。この計算結果から、MoO_3の存在は、せん断応力を緩和するとともに界面の親和力を増加させる効果があると推測された。 次に、ダイヤモンド合成に及ぼす表面仕上げ条件と表面粗さの影響を検討した。アルミナ粒子あるいはSiC粒子による表面仕上げと比較すると、ダイヤモンドペースト仕上げの基板表面が、もっともダイヤモンドの合成密度が高い。さらに、基板表面を粗くするほど、ダイヤモンド被膜は低い基板温度でも接合するようになる。例えば、表面粗さがRa=0.82μmでは、1323Kの基板温度でも純度の高い8面体構造のダイヤモンドを合成させ、接合させることが可能となった。
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