研究概要 |
本研究は,第3次クリープ領域を含むクリープ変形に対し十分な精度でこれを表現でき,また高温機械構造物のFEM解析に必要なクリープひずみ速度も常に表せるとして最近注目されているθプロジェクション法が,多軸応力状態の下でどこまで拡張使用できるかを実験的に検証したものである。またこの手法を一般的な多軸応力状態にある切欠材のクリープ変形問題に適用し、実機への適用可能性を調べた. その結果,次のような結論を得た. (1)試験材料にはSUS304鋼を選定し,試験温度はすべて700℃一定で各種実験を行った.単軸クリープ試験より得られたクリープ曲線を数値解析し,θプロジェクション法のθパラメータを統計的に算出し,各パラメータと負荷応力の最適関係式を求めることができた. (2)現有の引張-ねじり複合2軸クリープ試験機で多軸応力クリープ試験を試みたが,一様な引張応力に対して幾分曲げ応力の作用していることが判明したので,これを防止するのに必要なジグを設計製作し,引張応力に対し作用する曲げ応力はその7%程度に押さえることができた. (3)変動応力を加味したときのθプロジェクション法の有効性については次のように検討した。すなわち選択した高低2つの負荷応力(100MPaと120MPa)間で応力を急増,急減させる変動応力クリープ試験を実施した.応力変動後のクリープ変形曲線をθプロジェクション法とひずみ硬化説で推定し,実験値と比較した結果,応力急増試験では応力変動後のクリープ曲線を十分な精度で推定することができた. (4)3軸応力状態の一例として,切欠丸棒試験片を用いて多数のクリープ試験を実施した.その結果,切欠材のクリープ変形曲線へもθプロジェクション法を適用できることが分った.またθパラメータと応力の関係を求め,切欠材の長寿命(低応力)側でのクリープ変形曲線を求め,その破断寿命を推定した結果,クリープ破断寿命を単純に外挿したものより短寿命側を推定することが分った.
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