1.エピタキシャル膜と基板の界面に生じるミスフィット転位の生成過程の一形態として結晶成長表面からの転位半ループの核形成を考えれば、系の自由エネルギーから臨界膜厚を決定することができる。本研究では、半空間内部の転位の三次元応力場を厳密に評価してこの自由エネルギーの計算を行い、次のような結果を得た。 (1)同一すべり面上の二つの半ループの間の相互作用エネルギーは負である。従って、この場合の臨界膜厚は孤立した単一の半ループの自由エネルギーから計算される臨界膜厚より小さい。 (2)平行なすべり面上の二つの半ループの間の相互作用エネルギーは、二つの半ループの中心を結ぶ直線とすべり面と結晶成長表面の交線の間のなす角度が20°〜110°の範囲で正、0°〜20°と110°〜180°の範囲で負であり、54°付近で最大、0°付近で最小となる。 (3)互いに直交するすべり面上の二つの半ループの間の相互作用エネルギーは、相互の位置関係により、平行なすべり面上の二つの半ループの場合に比較して、より短い周期の正と負の間の変動を示す。 (4)半空間補正により、半ループの自己エネルギーと相互作用エネルギーのいずれもが減少し、また、相互作用のない場合の臨界膜厚も減少する。 2.Freundによって導かれた貫通転位に働く一般化された駆動力の表式を用いて、同一すべり面上のもう一つの貫通転位-ミスフィット転位による相互作用のMatthews-Blakeslee臨界膜厚に対する影響を調べ、二つの貫通転位の間の距離が膜厚のオーダーであれば、相互作用によってMatthews-Blakeslee臨界膜厚が10%〜25%ほど減少することが明らかとなった。
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