| 研究概要 |
本研究では,微視的な空孔が複雑に分布する実際の多孔質金属材料の損傷状態を評価するために,テセレーション解析によるボロノイ領域分割とステレオロジーの手法を利用して損傷テンソルを求める手法の開発を行った.具体的には実在材料の2次元モデルとして多数の円孔を不規則に分布させたアルミニュウム多孔平板を作成し,提案した手法によって材料の損傷状態を表す損傷テンソルを求め,試験片の塑性変形状態,破断状態、円孔の変形状態などと損傷テンソルの関係を実験的に検討した.得られた結果を要約すると以下のようになる.
1.テセレーション解析によるボロノイ領域分割とステレオロジーの手法によって得られたボロノイ多角形について,等価な長方形基準セルを算出し,損傷テンソルの分布状態を求める手法を開発した.
2.空孔が不規則に分布し,かつその直径も様々に変化する場合にもこの手法を拡張して損傷テンソルを求めることが可能になった.
3.本手法のよって求められる損傷テンソルの分布状態は,多孔平板試験片の破断開始位置や空孔の変形状態とよく対応しており,提案手法の妥当性が確認された.
4.多孔平板の変形を大変形有限要素法により解析し,円孔が規則分布する場合の応力分布と損傷テンソルの関係について調べ,損傷テンソルの補正係数を見積もる試みを行った.
以上のように,本研究では材料内部に空孔が分布することによる損傷状態を,テセレーション解析によって定量化する方法を開発し,その妥当性を多孔平板モデルについて実験的に確認することが出来た.今後の課題として空孔などの微視的構造が3次元的に存在する実在材料へ本手法を適用することが挙げられる.
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