研究概要 |
本研究では,延性が乏しい,接合界面が比較的弱いなど材料面からみて塑性加工が難しい金属積層板の最適成形条件(積層材料,積層比,加工条件など)について,成形加工実験および弾塑性応力解析をもとに検討した.得られた主な結果は次のとおりである. (1)二軸平面応力下の成形限界をHillおよびM-K理論を基礎に明らかにした.積層板製造(圧接)時に発生する塑性予ひずみが加工性を著しく悪くするので,接合不良とならない範囲で圧接圧下率を下げることが重要である. (2)ステンレス鋼(SUS430)/アルミニウム積層板の引張り曲げ破断荷重(耐荷力)を調べたところ,ステンレス鋼が曲げの外側にある場合にはその逆の場合よりも破断荷重が小さい.これは,変形抵抗の大きな層を曲げの外側に配置すると,変形の進行にともなって高強度層の板厚が減少するため積層板全体としての耐荷力が小さくなるためである. (3)軟鋼/クロムの三点曲げではクロムが曲げの内側にくれば良好な曲げができるが,クロムが外側に位置すると脆性なクロムに割れが生じる.クロムを外側にしたアルミニウム/クロム積層板はクロムの単一板より良好な曲げが得られる.これは,曲げの中立軸がクロム層側に移動し,表面における曲げ応力が低減されるためである. (4)接合界面が弱い積層板では加工中に剥離する可能性がある.接合界面の強度評価方法としてスリット付きの積層板の曲げ試験法を提案した.
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