OA機器、情報機器の普及により紙やテープを扱う機械が増えているが、このような機器では精度が不足すると容易に紙やテープにしわ、おれ曲がりなどが生ずる。本研究ではこのような機器のハンドリング技術を向上させるため、紙などのしわや折れ曲がり発生のメカニズムの解明を数値シミュレーションおよび実験を通して行った。本研究により得られた主な結果を以下にまとめる。 (1)紙のような薄肉媒体の大変形解析プログラムの開発。 紙やテープのように薄い媒体では大変形のみならず容易にダイヤモンド状の折れ曲がりを生ずる。この大変形折れ曲がりが解析できるようにシェル要素を用いた大変形解析プログラムを開発した。ここでシェル要素は変位を双一次式で仮定し低減積分を用いる要素を用いた。この解析ソフトにより、分割を細かくすればダイヤモンド状の折れ曲がりはほぼ解析できそうであることがわかった。 (2)大変形モードの変化の検討 薄い媒体では大変形時に異なった荷重を受けると容易に変形モードが変化する。また薄肉構造物ではある荷重を越えるとそれ以上の荷重を支えることはできなくなり、荷重とともに剛性が低下することもあるが、変位強制型の解析または修正Riks法を用いればうまく計算可能であることがわかった。また紙のような薄肉の媒体では初期の変形が剛性に大きく影響することもわかった。 (3)大変形接触挙動 情報媒体として紙やテープのように薄い媒体では機器から力をうけて変形するとともに移動する。このため解析ソフトでは大変形かつ接触解析の機能が必要となり、ペナルティ関数を用いた接触解析を行いほぼ実機に生じる問題に近い形で解析できるようになった。 (4)実際の機器での紙の挙動の解明 紙が機器のガイドから力をうけて変形し移動するメカニズムを解析し、紙の初期不整により紙の変形剛性が大幅に変化するため機器の信頼性のためには紙の初期不整などの制御も必要であることがわかった。実測値との定量的な比較をするためにはさらに多くのパラメータを含めた解析が必要である。
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