研究概要 |
近年,エレクトロニクス分野を始めとする最先端分野において,部品の小型化,高精度化,薄肉化の傾向が益々高まっている.塑性加工により,これらの要求に応じた場合,薄肉加工の様な非常に微細な加工では加工力全体に占める摩擦力の割合が高くなるため,摩擦現象の把握は非常に重要であり加工の成否に深く関わってくる. 本研究では,塑性加工による薄肉化プロセスにおけるトライボ現象の解明を目的とする.試作した薄板しごき加工装置を用いて,工業用純アルミニウムA1100-Oを素材とし数回のしごき加工を加えて薄肉化し,その際生じるトライボ現象について検討した.さらに,工具面転写による表面平滑化についても検討した.その結果,次のような結論が得られた. (1)試料に数回のしごき加工を加えた場合,圧延条痕に潤滑剤が捕捉され,加工硬化していない1段目は潤滑剤の違いによる摩擦係数の差がなく低い値を示した. (2)薄肉加工においては,パンチ側試料表面性状が,コンテナ側表面性状に影響を与える.パンチ側表面の線条痕部は,コンテナ側表面では光輝面に,パンチ側表面の焼付き部は,コンテナ側表面では白濁面となり,白濁面には,しごき方向に直角な方向に微小な亀裂が生じている. (3)試料の破断は,しごき方向と直角な方向に生じた微小な亀裂が進展し発生する.しかし,コンテナIとコンテナIIでは,破断形態が違い,コンテナの接触面の摩擦が小さいコンテナIIが,早い時期に破断する. (4)パンチ側試料表面で焼付きが発生しない場合,コンテナ側試料表面は工具面の転写面となる.また,2段目以降では,素材が加工硬化し,工具の凹部に入り込みにくくなるため,工具面より平滑な面が創成される.
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