研究概要 |
ポリプロピレン系スタンパブルシート製品の曲げ破壊時に発生するAE波を周波数分析することにより,破壊機構の識別ができることがわかったので,その方法を用いて,ガラス繊維の表面処理剤を変えた,ポリエチレンテレフタレート系スタンパブルシート製品を曲げ試験し,界面の接着性の違いが破壊機構に及ぼす影響を調べた.さらに本評論法が,他の複合材料に対しても有効かどうか調べるために,組成の異なる複合材料,すなわち強化繊維としてポリアリレート繊維(AF),アラミド繊維(KF),ガラス繊維(GF),カーボン繊維(CF)の連続繊維を用い,一方向強化したエポキシ樹脂成形品を作り,曲げ破壊時のAE波を周波数分析し,成形性の違いを評価した.それにより得られた主な結果は次の通りである.(1)繊維の表面処理剤としてエポキシ樹脂用バインダを用いた成形品では,繊維界面の接着性が良いので,曲げ破壊時にほとんど界面剥離が生じない.(2)不飽和ポリエステル樹脂用バインダやポリプロピレン樹脂用バインダを用いた成形品では,繊維界面の接着性はあまり良くないので,曲げ破壊時に多くの界面剥離が生じる.(3)曲げ強さは,CFRPが最も高く,GFRPがやや小さい値となっている.KFRPの曲げ強さはCFRP,GFRPの約半分であるが,AFRPの曲げ強さはさらに低くなっている.弾性率に関してはCFRPが最も高く,次にKFRP,GFRP,AFRPと順に小さくなっている.エポキシ樹脂単体の成形品の弾性率と比べると,これらの複合材料の弾性率はかなり高い.(4)AFRP,KFRPは延性的に破断する繊維で強化されているので,曲げ試験の中期からネッキングなどのために,繊維の断面積が小さくなり,そのため界面剥離などの破壊が進行し,最大荷重値になる前に荷重曲線の傾きが緩やかになる.(5)脆性的に破断する繊維で強化されたCFRP,GFRPは,最大荷重値付近でまず圧壊が起こり,その後,破壊が活発になり破断する。
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