研究概要 |
自由曲面の切削では特に工具切れ刃位置による切削状態の違いが加工誤差や仕上げ面粗さの違いを引き起こしている.ボールエンドミル工具による傾斜面切削において,傾斜角の影響による仕上げ面粗さの研究が既に報告されているが,より精密な加工条件での実験的検証が行われていない.そこで更に一刃当たりの送りを小さくし,工具先端点が切削に関与するか否かの場合分けに基づく切削実験を行った.またそれと平行して,GA(遺伝的アルゴリズム)に基づく準最短工具経路生成法を考案しシステム開発を行った. 切削実験では,傾斜角10度と40度の斜面を準備し,送り方向を上り・下りの2方向,切削状態を上向き・下向き切削の2状態で組合せ,計4通りの組み合わせで工具経路を生成した.その結果,1)4工具経路すべてについて傾斜角40度の場合の方が10度の場合よりも加工誤差のばらつきが大きい,2)下り方向・上向き切削状態の加工誤差のばらつきが一番小さい,3)加工誤差を平面近似した時の法線ベクトルの違いは加工誤差のばらつきの大きさに比べて小さいことが判明した.以上から、傾斜面と送り方向,上向き/下向き切削の違いによる加工誤差のモデル化を行うためには,ばらつきのモデル化自体が必要なことが判明した. 工具経路長が加工誤差に直接影響を及ぼすと考え,大域工具経路とそれを詳細化した工具経路による準最短経路生成法を開発し,電話機モデルの切削経路生成を行った.工作物形状表現に格子空間モデルを用いており,既開発のオフセット面生成法の2次的効果により工具切れ刃位置の変化も容易に推定可能である.今後は切れ刃位置の変化を評価基準とした経路生成も可能であるため,比較実験を行う予定である。
|