研究概要 |
本研究は,セラミックスの高強度化を目的にアルミナ微粉末を原料とする焼成前のセラミックス成形体(アルミナ粉のプレス成形体)を対象として,切削機構と破壊機構の両観点から切削加工面に残留するクラックを小さくする加工方法の確律を目指した.この場合の強度は,切削時にセラミックス成形体の表皮を走るクラックの挙動に大きな影響を受けると考え,切削過程に応用することから成形体の微小破壊におけるクラックの進展挙動を詳細に観察した.微小破壊実験は,ダイヤモンドの球体や切削工具刃先をセラミックス成形体の表面に押しつける方法とした.クラックの進展過程は,荷重と変位及びアコーステックエミッションの測定で行った.なお,このときの破壊エネルギは3〜5J/m^2と算出された.また,上記の実験と破壊痕の走査型電子顕微鏡の観察から,負荷に対するセラミックス成形体の破壊機構を明確にし,破壊モデルの提案に至った. 切削は,破壊の起源となるクラックの不安定伝播を可及的に微小にする手法とすることから,このとき切削条件すなわち工具形状が最も大きな原因になると考え,種々の刃先形状が加工表面粗さ,切削抵抗及び工具寿命に与える影響についても詳細に検討した. 微小破壊挙動と切削性の関係を切削加工面の走査型電子顕微鏡での観察及び切削時に発生する切屑の形状から検討した.特に,クラックの進展挙動と切屑るの形状との関係が明確になり,単純な切削モデルの提案が可能になった.上記の切削機構の検討から,本実験で目的とした工具の刃先形状が予測された.工具刃先の製作は,工具研削盤を用い,工具のすくい角を-10°のとき,他の形状より加工面表皮に傷の少ない精密加工ができた. また,刃先の振動数の1/4周期に切削する距離と切り屑の粒径が一致することから,刃先系の剛性を向上することで,より精密加工が可能になることも分かった.
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