研究概要 |
浸炭歯車の高い負荷能力は表面硬化層および圧縮残留応力の存在に起因する.その一方で,表面には浸炭異常層が形成されることが知られており,これが強度低下の原因となっている.CBN研削は浸岩異常層の除去と圧縮残留応力の増加に効果的であり,結果として疲労強度を向上させると期待される.本研究では,曲げ疲労強度を解析する上で重要な疲労亀裂の進展に注目して,CBN研削の表面改質効果を明らかにするための実験を行ない,以下の結果を得た. 1.試験歯車として,SGM415浸炭歯車を作製してその硬さと残留応力を測定し,厚さ10-15μmの表面に硬さが約200Hv低下する異常層を確認した.疲労試験を途中で停止して試料を作製し,SEM観察を行なった結果,異常層内に多くの亀裂が発生し,その中の1本が異常層から歯の内側へ伝播していることを確かめた. 2.著者らのこれまでの研究から,歯元を20-30μm研磨すると表面異常層が除去されて強度が向上すること,自動車用動力伝達歯車の表面は約100μm研削されることなどを参考にして,歯面と歯元を研削するための砥石形状を設計し,電着によってウォーム型のCBN研削砥石を試作した. 3.CBN研削を施すと,表面下約25μmの範囲に高い圧縮残留応力を生じること,曲げ強度が約15%向上することなどが知られた.疲労亀裂の進展シミュレーションを実施して,亀裂長さの視点から表面改質効果を考察した.この結果,残留応力と疲労強度向上の影響を著者らが提案している強度解析の指標である限界亀裂長さを用いて定量化できた.
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