研究概要 |
(1)ダイカスト用Al合金(ADC12)に,アルミナ短繊維を体積含有率Vf=3〜26%含有させた短繊維強化MMC,短繊維にさらに種々の粒子径d (0.6〜20μm)のアルミナ粒子をVp=20%含有させたハイブリッド強化MMC及び比較のため母材(ADC12)のディスク試験片とSUS440B窒化材のピン試験片(HV=1200)を組合せて,大気中でピン・ディスク摩耗試験を行った.その結果,強化材の総体積含有率が9%以上では,短繊維と粒子による強化はシビヤ摩耗の低減・防止に著しく効果がある.また,マイルド摩耗率は,母材>短繊維材>ハイブリッド材となり,ハイブリッド強化は単一強化よりもMMCの耐摩耗性向上に著しく効果がある.しかし,その摩耗形態は短繊維体積含有率Vf,粒子径dにより3タイプに変化する.母材およびVf=5%以下の短繊維材は凝着摩耗型,Vf=5%以上の短繊維材およびd=6μm以下のハイブリッド材は3元アブレシブ摩耗型,d=6μm以上のハイブリッド材は2元アブレシブ摩耗型である.また摩耗形態により摩擦係数・相手材への攻撃性も変化する. (2)SiC粒子で強化したAl基MMCのディスク試験片とS45C鋼のピン試験片を組合わせて乾燥摩耗試験を行った.その結果,SiC粒子による強化は摩擦初期のシビヤ摩耗を抑制あるいは軽減する効果があるが,相手材への攻撃性が現れる.一方,定常域のマイルド摩耗に対する強化粒子の影響は比較的小さいだけでなく,粒子含有率が大きくなると摩耗率を増加させる傾向を示す.また,高真空中(5x10^<-4>Pa)では大気中の約1/100倍になり,MMCの摩耗率は母材よりもかなり小さくなり,特に粒子径20μmでは摩耗粒子が摩耗面で移着を繰り返すためほとんど摩耗しなくなる.
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