研究概要 |
本研究は高水圧供給装置の安定化手法を求めることを目的とする.理論モデルは実機に即して,ポンプから一定流量がポンプ室に流入し,そこにポペット型安全弁と負荷絞りへの管路および動吸収器としてのアキュムレータが接続されている系を定式化した.基礎方程式を定常動作点近傍で線形化し,主要パラメータが各動作点の安定性に及ぼす影響等を,数値シミュレーションと実験により検討した. 弁リフト(変位)と供給圧力に関して安定限界線図を描くと,基本的には供給圧力の増加とともに安定性は劣化する.弁のダンパーは特に有効であり,減衰の大きさが十分であれば全圧力域で安定とすることができる.また,ある容積以上のポンプ室でも同様に全域安定となる.アキュムレータの付加により安定性は向上する.ポンプ室とアキュムレータとの接続管形状の影響は大きく,その直径および長さには最適値が存在する.これらの安定限界線は動作点の移動に従って複雑に変化するが,それは不安定特性根の種類(弁,負荷管路,アキュムレータ等による振動モード)が切り替わるためである.アキュムレータ気体室の予圧は高いほど系は安定であるが,ポンプの脈動除去には低い方が良好である.実験で求めた静特性,安定限界,および不安定時に弁と弁座の衝突などによって起こるカオス状波形はシミュレーション結果と定性的に一致し,理論モデルの妥当性が確かめられた. 以上により,水圧調製弁としての直動型ポペット弁回路の安定化とそのアクティブ制振,さらに水圧用バランスドピストン型リリ-フ弁の開発についての基礎的所見が得られた.
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