研究概要 |
本研究は,液晶のレオロジーと液晶分子の分子構造の関連を解明するための基礎研究として行われた.液晶分子としては,実在の分子を用いるのではなく、因子を分析できるように,モデルポテンシャルとしてGay-Berneポテンシャルを用いてシミュレーションを行った.得られた成果を以下に示す. 1.Gay-Berneポテンシャルを用いた相転移MDシミュレーションにより,温度を下げていくと等方相→ネマチック相→スメクチック相→結晶相と転移し,Gay-Berneポテンシャルが液晶のモデルポテンシャルとして適切であることが確認できた. 2.球状分子のせん断流れの非平衡分子動力学法として開発され,用いられてきたSLLOD法を,回転楕円体であるGay-Berneポテンシャルのせん断流れに適用できるように,バックグラウンドのせん断による回転の影響を取り込んだ修正SLLOD法を開発した. 3.修正SLLOD法により液晶のせん断流れのシミュレーションを行い,せん断流れのスタートアップ時における系の構造の過渡的変化および定常状態における構造とレオロジー物性を検討した.その結果,スタートアップ初期には,初期状態(配向度,配向角など)とせん断速度によって種々の過渡的な変化のパターンが生じることが明らかになった.例えば,液晶のディレクターが大きく回転するときには配向度が急激に低下する現象などが見いだされた.また,定常状態では液晶のディレクターはせん断速度に関係なく流れ方向と一定の傾きを持っているが,配向度はせん断速度の増加とともに大きくなることが明らかになった。さらに、レオロジー特性に関して粘度のshear-thinning特性および法線応力効果の発生を明らかにすることができた.
|