研究概要 |
測定部の長さ900mm、幅40mm、深さ240mmの回流式の水路の内部に発達する乱流境界層を主たる測定対象とした.境界層が発達する壁面に,流れに対して直角な幅2mmのスリットを設け,そこから吹き出し・吸い込み流を加えることによって周期的な変動を与え,変動の下流への発達を主に調べた.測定部底面には主流方向に8つのバルブが設け,これらの開度を調整することによって主流の一部を測定部の外に定常的に吸出すことで2.79×10^<-3>Pa/mmの逆圧力勾配を与えた. 速度場の測定にはCCDカメラ,ビテオ録画装置およびビデオ信号に周期したパルススリット光源,パーソナルコンピュータ,ワークステーションから構成される,新たに作成した画像処理流速計を用いた.測定部の50mm平方の領域の400点における瞬時の速度ベクトルを求めた後,時間平均値ならびに周期変動に同期したアンサンブル平均を施し,時間平均,周期変動および不規則変動速度成分の空間分布を求めた. 流れ場の解析には,画像処理流速計の利点を生かし,主に渦度や速度変動の等値線のパターンの観察を行った.その結果,圧力勾配がない場合に比較して,逆圧力勾配下ではスリットから発達する渦運動を伴う流体魂の下流への発達が顕著で,その移動速度は局所平均流速とほぼ等しかった.このような結果は,並行して行われた二次元非対称ディフューザを用いた同様の実験や,チャネル流,ディフューザ,バックステップ流れの数値解析結果とも定性的に整合するものである.吹き出し流れの強さや逆圧力勾配が十分大きくなかったため,壁面から境界層がはく離した状態での周期変動の発達の様子を実験的に調べることはできなかったが,数値解析結果から周期変動の発達は逆圧力勾配に対してはおおむね単調な変化をすることがわかった.
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