研究概要 |
乱流エネルギ収支の評価のため,乱流諸量の測定精度の確保に注意を払い,詳細な誤差評価を行った.中でも,乱流エネルギの消散率は,エネルギ収支における負の寄与の主たるものであるため,その測定精度がバランス全体を評価する際に支配的となる.そこで,消散率の測定精度の確保に特に注意を払い,Kolmogorovスケールと熱線センサの空間分解能の関係を考慮して,センサ長を0.6mm(直径3μm)に固定して測定を行った.また,高周波数の速度変動を測定するため,サンプリング周波数をロ-パスフィルタのカットオフ周波数の5倍とした.カットオフ周波数を設定する際に,変動速度の時間微分のスペクトルを求め,誤差評価の指針とした. 以上の結果,消散率の計測に含まれる偶然誤差を,断面最大値の4.5%以下に押さえることができた.一方,平均速度ならびに変動速度の二次および三次モーメントに含まれる偶然誤差を求めたところ,それぞれ断面最大値の2.4%,4.1%,6.1%で,エネルギ収支の評価には十分であることを確認することができた. 消散率の測定結果を過去に行われた類似の実験ならびに最近おこなわれたDNSの結果と比較したところ,本測定結果のほうがDNSとの整合性が高く,空間・時間分解能に関して十分検討を行った成果を確認することができた. 実験に対応する境界条件の下で行ったレイノルズ応力方程式モデルによる数値解析との比較を行った.平均速度,レイノルズ応力の垂直成分,三次モーメントならびに乱流エネルギの消散率を比較したところ,三次モーメント以外については測定精度の範囲内で良い一致を得ることができた.ただし,三次モーメントについては,計算に用いた乱流モデルの側に欠点があることがすでに知られているため,測定結果との一致が得られなかったことは本実験の結果について低い評価をもたらすものではない.
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